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「そうだ、夏に帰った時だけど、日本ではお互い実家だから、どこで抱き合う? ホテル取る?」
「義仁、恥ずかしいよ」
「恥ずかしい? 何で、大事なことだろう?
数ヶ月に一度しか会えないのに、やっと会えて何も出来ないなんて嫌だからな」
「そうだけど、今決めること?」
「……まあ。そうだな。嫌だな、離れるの」
「今日来たばっかりじゃない」
「そうだけど、そうなんだけど、やっと恋人になれたのに、離れなきゃならないって拷問じゃねえ?」
「じゃあ、夏に帰って来た時に付き合えば良かったのかな?」
「そうしたら、今夜が拷問だろうが」
「義仁は変なところで真面目ね」
ちゃんと形にして手を出すってことなんだ。同意の上だってことね。
「法子に対して真面目じゃなかったことはない」
あまりにも真剣な顔で言うものだから、私は胸がくすぐったくなった。恥ずかしくなって、俯く。そっと視線を戻すと義仁がにっこりと笑った。
胸がいっぱいになる。
「義仁はいつもそうやって笑うのね」
「そりゃあ、法子と初めて二人で出掛けた日からニヤニヤしっぱなしだからな。嬉しくて仕方がない」
んん?と思って義仁を見つめると、笑ったままだ。あれ、ひょっとしてと思い当たった。
「義仁、それ、ずっとニヤニヤしてるってこと?」
義仁が口元を手で覆ってしまった。
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