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──8月
まだ一時帰国だけれど、義仁なりにニヤニヤして帰って来た。
「法子、おばさんいる? 」
「お母さん? いるよ。どうしたの?」
「ちょっと喋って行く」
「うん。上がって行って」
義仁は楽しそうに母親と喋ってる。多分、親を安心させてくれているのだと思う。ソツのない義仁らしい。そして、母親は私に対して“でかした”と思っているに違いなかった。だって、いつもより二段階くらい声が高い。
そうだよねえ、義仁を連れて帰って喜ばない親はいないだろう。全方位弱点などないのだから。
「義仁くんはほんと格好いい顔してるわね」
なんて、本人に言ってるよ、お母さん。そして否定もしないよ、あの人は。
「大友家は全員容姿に恵まれてるものね」
母親がそう言ったのでつい、言ってしまった。
「私、見た目は裕くんの方が好み」
「……あ、そう」
母親は顔をひきつらせたし、義仁は乾いた笑い。
「どっちもすごく格好いいものね」
母親がフォローした。私は……後で義仁に謝るとしよう。つい出ちゃった。
──翌日、二人でデートすることにした。残念ながら尚信と真知子の子供は今まさに産まれるかどうかのタイミングで義仁は会えそうになかった。
「また正月だな」
「うん。そうだね」
「裕の方が好みって言ったこと拗ねてないよ、俺は」
と、直ぐに言ってくるものだからくすくす笑った。
「どっちもものすごいイケメンよ。でも義仁はそんなことも言われたことなかったわよね」
「裕の顔が好きなら仁さんも好きだよなあ。彫りが深い顔がいいってことか」
「確かに、二人似てるね。義仁はお父さんと似てる」
「うん、そうだな」
ブラブラ歩きながらそんな話をする。
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