vol.4

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「義仁は私のどこが良かったの?」 「見た目はね、好みが過ぎるってくらい好き」 ……さっきの、裕くんの方が好みって言ったことまだ根に持ってるのかな。 「ありがとう。大友家に比べたらそんなことないんですけど」 「性格はね、その癖になる純粋さと鈍さと、的外れな気遣いと、綺麗だって自覚のなさと、俺を見た目で判断するところも好き」 「……」 何も言えない。確かに見た目で判断しちゃってたな。悪い方へ、だけど。 「でも、性格も完璧だろ、俺」 「義仁……」 「あはは。なぁに、俺ってこんな奴だもん」 呆れるけどその通りで、私もつられて笑うしかなかった。 「そうだ、法子。今日はホテルで食事の予約してるからな」 「え、そんなのいいのに」 「全然デートらしいこと出来てないから、今までの分、ぎゅっと濃縮しといた」 「……ありがとう」 「うん。今夜は泊まって、明日は何するかな」 「ねえ、何しよう」 そんな緩く予定を考えながら歩いていた。 「俺は法子と結婚したいんだけど、法子はどう思う?」 何気ない世間話のつながりで義仁はそう言った。ホテルで食事を予約しているなら、その時に言っても良かったのに、義仁からのプロポーズは日常の一部のようだった。 「私も義仁と結婚したい」 義仁の口からすぐに、早口で捲し立てるような英語が聞こえた。 「何て言ったの?」 「や、ごめん。ちょっとほっとした。テンション上がってしまった」 「嬉しいの?」 「ああ、もちろん。法子は?」 「もちろん!」 特別なものっていらないんだなって思った。敢えてホテルのディナーじゃなくて、ロマンチックなホテルの部屋じゃなくて、当たり前にこの先が見えた、義仁らしい、自然なプロポーズだった。
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