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「義仁は私のどこが良かったの?」
「見た目はね、好みが過ぎるってくらい好き」
……さっきの、裕くんの方が好みって言ったことまだ根に持ってるのかな。
「ありがとう。大友家に比べたらそんなことないんですけど」
「性格はね、その癖になる純粋さと鈍さと、的外れな気遣いと、綺麗だって自覚のなさと、俺を見た目で判断するところも好き」
「……」
何も言えない。確かに見た目で判断しちゃってたな。悪い方へ、だけど。
「でも、性格も完璧だろ、俺」
「義仁……」
「あはは。なぁに、俺ってこんな奴だもん」
呆れるけどその通りで、私もつられて笑うしかなかった。
「そうだ、法子。今日はホテルで食事の予約してるからな」
「え、そんなのいいのに」
「全然デートらしいこと出来てないから、今までの分、ぎゅっと濃縮しといた」
「……ありがとう」
「うん。今夜は泊まって、明日は何するかな」
「ねえ、何しよう」
そんな緩く予定を考えながら歩いていた。
「俺は法子と結婚したいんだけど、法子はどう思う?」
何気ない世間話のつながりで義仁はそう言った。ホテルで食事を予約しているなら、その時に言っても良かったのに、義仁からのプロポーズは日常の一部のようだった。
「私も義仁と結婚したい」
義仁の口からすぐに、早口で捲し立てるような英語が聞こえた。
「何て言ったの?」
「や、ごめん。ちょっとほっとした。テンション上がってしまった」
「嬉しいの?」
「ああ、もちろん。法子は?」
「もちろん!」
特別なものっていらないんだなって思った。敢えてホテルのディナーじゃなくて、ロマンチックなホテルの部屋じゃなくて、当たり前にこの先が見えた、義仁らしい、自然なプロポーズだった。
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