vol.4

32/37
前へ
/192ページ
次へ
義仁は気取らなくても、素敵になってしまうのだ。とても私たちらしい結婚の決め方だと思う。 ホテルの食事もホテルの部屋も、私のイメージするプロポーズに相応しい場所だったけど、ここまで待てなかったんだなと思うと、やっぱりそれも義仁らしいと思ってしまうのだ。 「来年、こっちに完全に帰るけどしばらくは実家に住むからこうやってデートしような、法子」 「家はどうするの?」 「もう一緒に住むからな、法子も希望があれば言って。仁さんに頼むとすんごい家選んで来そうだから、年明けまで慎重に事を運ぼう」 と、深刻に言うものだから笑ってしまった。 「仁さん、仕事早すぎるんだよ」 「わかる気がする」 想像出来てしまってまた笑う。 「仁さん、喜ぶよ。相手が法子だって知ったら」 「そう? 朋子ちゃんの方が喜ぶ……あ、違うわよ、裕くんと朋子ちゃんがくっついたらってこと」 「ああ、まあ、朋ちゃん大好きだからな、あの人。んでも法子のことも可愛い可愛いうるさかったぞ?」 「……そうなの。面白い人ね」 「うん。親戚になるんだから、よろしくね」 「あはは、楽しそうね」 「なぁ、もう一泊しない?」 「もう。義仁ってば、今来たばっかりじゃない」 「そうだなぁ。早く『久しぶり』なんて言わない距離になりたいな。こうやって会ってすぐに離れる事を考えずに済むように」 「もうすぐよ」 私は義仁の額にかかる髪を避けて、軽くキスをしてそう言った。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1119人が本棚に入れています
本棚に追加