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──お正月。
ビシッとスーツを来た義仁が我が家にやって来た。
「どうしたの?」
「どうしたのって、結婚の挨拶」
「いいのに、今さらスーツなんて」
「似合わない?」
「いえ、すごく素敵」
「へえ、裕とどっちが格好いい?」
首を傾げてそう言うものだから、困った。そこだけ玄関まで出てきた母親に聞かれて、母親は声を出して笑った。
元々の顔見知りだったから結婚の挨拶は穏やかに済んだ。親同士が仲がいいのだから何も心配することはなかった。お互いの実家が近いということは遠くに住まないだろうと、父親も上機嫌だった。
私たちはそのまま義仁の家に挨拶に行った。そこでも歓迎され、実はさっきまでそこに朋子ちゃんもいたと聞いて、知らずにニヤニヤしてしまった。
「ねえ、もしかしてそういうことなの?」
「なあ。朋子ちゃんこっち帰ってくるんだって」
「恋人は?」
「別れたらしい」
「タイミングってあるものね」
私は得意気に言ってみせた。
「長い付き合いになるね、法子ちゃん」
と、なぜか叔父の仁さんに握手された。ふふ、こういうところも裕くんに似てる。
「あれ、そう言えば裕くんは?」
「午前中に朋ちゃんが忙しくしてたら拗ねて帰っちゃった」
「……本当?」
「本当なんだって」
「あ、朋子ちゃんは、真知子実家に赤ちゃん連れて帰ってるから忙しいんだね」
「そうそう、俺たちも行こうか」
私たちはこの日、三軒目の家へ向かった。
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