vol.4

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真知子は腰を痛めたらしく、酷い有り様だったけど、私たちはそんなことを気にする関係でもないので真知子は気にせず、息子を寝たまま差し出した。 「颯太くーん」 私は何度も会っているから平気だけど、颯太くんは座った姿勢できょとんと義仁を見ていた。 「まだ人見知りがギリギリセーフ。午前中、裕くんも一瞬抱っこしてくれたみたいよ」 「あ、朋子ちゃんも帰ってくるんだってね。何か昔に戻ったみたいで楽しいね」 「……義仁、何でスーツ」 「法子んとこ挨拶」 「へぇ、そっか、そっか。おめでとう! 痛い。痛い」 「ごめん、真知子大変な時に」 「いいって、情けないだけ。老いよね、老い」 「母親って大変ね。尚信は?」 「今は家に帰ってるから颯太の相手してくれる人が来て預かる」 「すごいな、尚信に似てる」 「そりゃ、尚信の子だもん」 義仁は颯太くんと遊びながら感慨深そうに、何度も尚信に似てると繰り返した。それから真知子にも似てると言っては不思議そうに颯太くんを見つめるていた。 「ね、不思議よね。親になるって不思議。考えられなかったもん」 真知子は寝転んだ姿勢で言った。 「私はまだ考えられないよ。欲しくないってことじゃなくて想像出来ない」 「まあ、あんたたちの子供ならまたとんでもなく可愛いんでしょうね」 そう言われて、義仁と顔を見合わせた。 「そうだ、真知子。義仁がね、私のこと可愛いって言うんだけど……」 「惚気かよ! 痛、痛、痛ー」 真知子は声を出すのもやっとで苦しそうだ。ごめん。 「真知子、どう思う? 法子ずっとこんなんだよ」 「そこがいいんでしょ?」 私は真知子の方を向いてたから見えなかったけど、義仁は深く頷いたらしい。それを颯太くんが真似して私も真知子も義仁も声を出して笑った。
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