vol.1

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「お腹すいたね」 「そうだね」 ってことで、二人で夕食の準備に取りかかることにした。俺は何か出来合いの物を買うつもりだったけど、瑞穂さんはガシガシとかごに食材を入れていくものだから、作ってくれるんだあ。と、楽しみにしていた。瑞穂さんの手料理……。 「何かごめんね。家に来て、ご飯も作ってもらうなんてさ。あ、でもお酒のアテみたいなのばっかり選んじゃった」 ん?作って、もらう?どういう意味だろうとその場で身体を固まらせていたら 「あ、勿論、手伝うからね」 瑞穂さんが俺の表情に慌てて言う。あ、これは…… 「ごめん。俺も……瑞穂さんが作ってくれるとばかり。瑞穂さんが食材選んでたからさ」 「え!! そうだったの!? そっか、食材選んだの私だものね……」 二人で顔を見合わせたけれど、瑞穂さんはじゃあ私が作るね、とは言わない。俺が作るって言うのを待っているような……?はあ、嫌になる。せっかくちゃんと自立してるって見せたくて呼んだのに。自炊もしてないとバレたらせっかく上がった好感度がまた下がりそうだ。 俺は、料理が出来なかった。しかも瑞穂さんが選んだ食材でちゃっちゃと作るなんてことは到底出来そうにない。作って下さいって言うべきか……。情けないような気持ちで瑞穂さんをチラリ見ると、まだ待っているような表情だった。
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