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仕方なく正直に言うことにした。
「俺、料理出来ないんだ」
瑞穂さんの反応を待ったけれど、驚愕の表情のまま、沈黙していた。
「嘘でしょ? 今までどうしてたの?」
「……今まで? 外食したり、彼女が作ってくれたり。いや、もちろん俺も手伝うし、作る以外の事はして……」
一瞬、瑞穂さんが気まずそうな顔をしたのを見逃さなかった。
「……瑞穂さん、何その顔」
「え、横浜くん料理できなくて大丈夫だったのかなっ……」
「瑞穂さん!」
瑞穂さんの言葉を無理に遮った。『今までどうしてたの?』っていうのは、今まで誰が作ってたの?ってことじゃなく、ヒモorペット(ひどい!)は主人(ご主人様)の代わりに家事をしてると思ってたからだ。
「だから! そんな付き合いしたことない!
って言ってるだろ!」
ほんと、失礼な人だ。こんなことをすぐに顔や言葉に出しちゃうあたり真っ直ぐな人だなぁと思うけど。と、すっかり恋のフィルターがかかった発想をする。
「あはは、ごめん、ごめん。だって、スッと入って来ちゃうからさ、ほんとペットっぽい可愛さ」
「そもそも、ペットは料理出来ないじゃん。尽くされる方じゃん」
俺がそう言うと、瑞穂さんはハッとして
「ほんとだねえ」
と、破顔した。うわぁ、もうヤバい。何この顔。ときめきまくって恥ずかしくて目を逸らすと、
「ほんと、ペットみたいね。可愛い」
俺の髪をくしゃくしゃと乱した。その手を捕まえて、自分の頬を乗せた。気持ちいい。幸せ。腹は減ったけど。
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