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瑞穂さんの手に自分の頬を預けながら
「瑞穂さんが作って」
と、頼んだ。一瞬、瑞穂さんが“まさか、こうやって食事も作らせていたのでは?”って顔をしたので、目を細めて“違う”と反論した。
「……私も、料理出来ないのよ」
「嘘でしょ? 今までどうしてたの?」
「……今まで? 外食したり、彼が作ってくれたり。いや、もちろん私も手伝うし、作る以外の事はして……」
瑞穂さんがそこまで言うと、俺も吹き出した。
「駄目ね、私たち」
「まさかぁ。俺は、瑞穂さんが駄目なこと知ってたし。……ついでに駄目なとこ見たから好きになったんだよ。グダグダの酔っぱらいだったもんね」
瑞穂さんが俺の頬に当てていた手でそのまま頬をつねる。
「いてて」
「もう! 忘れてっ!」
「あれはなかなか忘れられないなあ……」
懐かしいし、仕事とのギャップ、いやあ、あの思い出さえ可愛いと思っちゃうよね。
「とにかくご飯!」
「はぁい。じゃあ、一緒に作ろ。何食べたかったの?」
「アクアパッツァ」
ハードル高。それ、俺に作らせる気だったのかよ。……作るけど。動画を検索すると、それを見ながら作ることにした。
「瑞穂さん、料理出来そうって思ったのになあ」
「私、プライベートは全然なのよ」
「あ、そうだったね」
ムッとした顔が横目に入った。怒ってる、怒ってる。何だか可笑しくなって笑うと、瑞穂さんもつられて笑った。
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