vol.1

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瑞穂さんの手に自分の頬を預けながら 「瑞穂さんが作って」 と、頼んだ。一瞬、瑞穂さんが“まさか、こうやって食事も作らせていたのでは?”って顔をしたので、目を細めて“違う”と反論した。 「……私も、料理出来ないのよ」 「嘘でしょ? 今までどうしてたの?」 「……今まで? 外食したり、彼が作ってくれたり。いや、もちろん私も手伝うし、作る以外の事はして……」 瑞穂さんがそこまで言うと、俺も吹き出した。 「駄目ね、私たち」 「まさかぁ。俺は、瑞穂さんが駄目なこと知ってたし。……ついでに駄目なとこ見たから好きになったんだよ。グダグダの酔っぱらいだったもんね」 瑞穂さんが俺の頬に当てていた手でそのまま頬をつねる。 「いてて」 「もう! 忘れてっ!」 「あれはなかなか忘れられないなあ……」 懐かしいし、仕事とのギャップ、いやあ、あの思い出さえ可愛いと思っちゃうよね。 「とにかくご飯!」 「はぁい。じゃあ、一緒に作ろ。何食べたかったの?」 「アクアパッツァ」 ハードル高。それ、俺に作らせる気だったのかよ。……作るけど。動画を検索すると、それを見ながら作ることにした。 「瑞穂さん、料理出来そうって思ったのになあ」 「私、プライベートは全然なのよ」 「あ、そうだったね」 ムッとした顔が横目に入った。怒ってる、怒ってる。何だか可笑しくなって笑うと、瑞穂さんもつられて笑った。
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