vol.1

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どうにかこうにか二人で作ったアクアパッツァ(意外に簡単だった)を瑞穂さんは気に入ったのか、スープも飲み干す勢いだ。 マッシュルームをガーリックで炒めたものと、フリルレタスとチーズの入ったサラダ。ライ麦パン。あとどう使っていいかわからなかったアンチョビは次回に持ち越すことにした。と、これは次の約束への口実だけど。 料理出来ない人が選ぶ食材なのかよと思うけど、いい感じになってきた瑞穂さんに、楽しい酒で良かったなぁと思う。 「ほんっと、可愛い顔してるわね」 って言うの、もう7回目。 「ありがと」 って言うのも7回目。完全に酔ってるのをいいことに 「瑞穂さん、今日泊まってく?」 なんて言ってみたけれど、 「いや、大丈夫よ」 と、そこだけキリッとした顔で言われてしまった。ざんねーん。 「ほんっと、可愛い顔してるわね」 と、12回目に言われた時は 「うん。そうでしょ。どう思う?」 って聞いてみた。 「うーん……羨ましい。こんな顔に生まれてたら、人生かわってたと思う。ウホウホだよね。いいなぁ」 ウホウホって、何だよ。ゴリラ?『いいなぁ』ってことは瑞穂さんも可愛い(俺の)顔に生まれたかったってこと?俺の顔を見てうっとりしてるけど、単に可愛いなって思ってるだけっぽい。色恋とは遠い感じ。
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