vol.1

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「んー、そっかぁ。俺はもっと格好いいキリッとした顔になりたかったなあ」 「そうなの? じゃあ、私と交換出来たら良かったのにね」 もちろん、こんなのは軽口で、出来るわけないと知っていて言うのだ。だけど、本当に変えることが出来たとしても瑞穂さんは何の未練もなく自分の顔を俺に差し出すんだろう。そのくらい、俺の顔の方が好きなんだろう。こんなに何回も『可愛い』って言うくらいだもんな。 「そうなのかなあ。瑞穂さんの顔、好きだよ」 どちらかというと、男性的な顔かもしれない。眉もかかなくてもしっかりとあるし、口も大きめ。 「あらそう、私も横浜くんの顔好きよ。可愛いもん。次はそんな顔で生まれたい」 次って、まだ今世も序盤だろ。 「そういうどうしようもないことってさスライドしたらいいんだよ」 「……スライド?」 「そう。例えばね。遺伝子はさ、無意識に自分の弱いところを持ってる相手を求めるっていうだろう? より強い遺伝子を残したいから」 「うん、まあ、そうね」 賢い瑞穂さんからすると、ちょっと違うのかもしれないけど、おおよそはそうなのだろう。一応は頷いてくれた。 「見た目は、わかりやすく意識出来る選択だと思う」 「ふん?」 瑞穂さんは、意味がわからないとでも言うような相槌をうった。
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