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「例えば、背の低いことがコンプレックスで生きてきたとして、自分の子どもに同じ気持ちを味あわせたくなかったとしたら?」
「……背の高い相手と結婚したら可能性は上がるわね」
「そう! じゃあ、薄毛コンプレックスの人はフサフサの人と。俺で言うと、キリッとした……顔の人、と?」
笑顔で瑞穂さんを見つめると
「なるほど。そうね。自分が背が低いのが嫌だからって小柄な女性を選ぶと自分の息子も背が低くなる。エンドレスループね」
「まあね。そんなこと気にしないのが一番なんだけど。逆もそうだね。背が高いのがコンプレックスなら低い人を選ぶ」
「見た目はわかりやすいものね」
って、俺が言いたいのはそこじゃなくて……
「だから、スライドしたらどう? 来世じゃなくて、今世でさ」
気付いてくれるかと、可愛い顔を瑞穂さんにぐっと近づけた。
「それがスライド……?」
「瑞穂さんがこの顔になるのは無理だけど、瑞穂さんの娘がこの顔になれるかもしれないよ? “なる”から“育てる”に気持ちをスライドさせるの。どう?」
「うわぁ。自分の娘に毎日“いいなぁ”って思ってしまいそう」
……。さすが、瑞穂さん。
「可愛いと思うよ?」
「そうでしょうねえ。だけど、あなた自分の顔、コンプレックスじゃないでしょう?」
「バレたか」
「そりゃ、それだけふんだんに使ってたらね」
テヘペロしてみせると呆れられたけど
「可愛いでしょうね」ってもう少し未来を見てくれたみたいだった。
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