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「違うの。私、ほら、あなたのこと、疑ってたでしょう? ペットとか、ヒモとか」
「はは。ひどいな。でも、そうだったね」
「それなのに、今は私の方がヒモみたいでさ。ペットとかそんな厚かましいことは言えないけど……」
瑞穂さんにとってのペットの立ち位置は高いんだ。えっと、ヒモ……って言った?
「は? 瑞穂さんのどこがヒモなのさ」
「だって、至れり尽くせり」
「いやいや、ヒモの意味! 役職付いてる高給取りが何を言ってるんだ」
「高給取りって久しぶりに聞いたわ。まあ、使い道もないから、貯まってるけどね」
瑞穂さんは自分の飾らない身なりを疎むように見ながらそう言った。
「俺も! 瑞穂さん全然使ってくれないから貯まってるよ!」
必死に堅実アピールをしてしまう。あれ、俺はまだ振られてないのか?
「本当はもう、あなたのこと手放せないと思うの」
小さな声だった。すごい、小さな声。
「な、何て!? 瑞穂さん」
抱き締めようとしたら、さっと手で押し返された。何だよ。何!?イラッとして睨むと
「その顔、可愛い」とか言われ、「今いいわ!」と怒る。
「でも、どうしても関係がすすめられないの。ごめんなさい」
いや、振られんのかい。待てよ。
「何で!?」
「会社が同じでしょ?」
「……同じといえばそうだけど、勤務地違うじゃん」
会社でなんて会ったこと、ほぼないというのに、そんなことが問題なのだろうか。
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