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「横浜くんが、いると思うと本社に行くのが嫌になるくらい落ち着かなくて、動揺してしまうの。会ってしまったらどうしよう、誰かに見られたらどうしよって。上手くやってきたのに、上手くいかないのよ……。絶対にあなたに迷惑かけると思う」
「はぁ?」
「ほら、私はこんなんだし。そそのかしたとか、たらしこんだとか、」
「いや、瑞穂さんにそんな手練れイメージ誰も持ってない」
「釣り合ってないし、買ったと思われそうで」
「いや、俺は売り物じゃな……」
そっから、瑞穂さんはあれこれあれこれ言い出して
「横浜くんと同じ会社だと、心身共に正常じゃいられないの!」
と、言った。呆気にとられすぎて、ポカーンとしてしまう。そんな理由かよ。たけど、動揺なんていうものは頭で分かっててもどうしよもない。コントロール出来ないし。
それに、こういうことだ。
「ちゃんとやってる瑞穂さんが、ちゃんと出来なくなるくらい俺の事を好きってことでいい?」
瑞穂さんは真っ赤になったけれど、コクコクと頷いてくれた。
「わかった。じゃあ、あとは俺に任せて。今日はこのくらいにしとくからね」
と、瑞穂さんをぎゅうぎゅう自分の胸に押し付けた。このくらいにしとかないと、俺がヤバい。
「さぁ、ご馳走作りますので、お座り下さい。ご主人様」
語尾にハートマークがつくような言い方をして、俺はキッチンへと向かった。アンチョビよーし!今日はバーニャカウダ。ああ、楽しいな。嬉しいな。
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