vol.1

39/46
1112人が本棚に入れています
本棚に追加
/192ページ
「横浜くんが、いると思うと本社に行くのが嫌になるくらい落ち着かなくて、動揺してしまうの。会ってしまったらどうしよう、誰かに見られたらどうしよって。上手くやってきたのに、上手くいかないのよ……。絶対にあなたに迷惑かけると思う」 「はぁ?」 「ほら、私はこんなんだし。そそのかしたとか、たらしこんだとか、」 「いや、瑞穂さんにそんな手練れイメージ誰も持ってない」 「釣り合ってないし、買ったと思われそうで」 「いや、俺は売り物じゃな……」 そっから、瑞穂さんはあれこれあれこれ言い出して 「横浜くんと同じ会社だと、心身共に正常じゃいられないの!」 と、言った。呆気にとられすぎて、ポカーンとしてしまう。そんな理由かよ。たけど、動揺なんていうものは頭で分かっててもどうしよもない。コントロール出来ないし。 それに、こういうことだ。 「ちゃんとやってる瑞穂さんが、ちゃんと出来なくなるくらい俺の事を好きってことでいい?」 瑞穂さんは真っ赤になったけれど、コクコクと頷いてくれた。 「わかった。じゃあ、あとは俺に任せて。今日はこのくらいにしとくからね」 と、瑞穂さんをぎゅうぎゅう自分の胸に押し付けた。このくらいにしとかないと、俺がヤバい。 「さぁ、ご馳走作りますので、お座り下さい。ご主人様」 語尾にハートマークがつくような言い方をして、俺はキッチンへと向かった。アンチョビよーし!今日はバーニャカウダ。ああ、楽しいな。嬉しいな。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!