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瑞穂さんから貰った化粧品のサンプルが案外良くて、今度会ったらどこのか聞こうと思っていた。
だけど、そこから会うこともなく俺も学生の終わりとともにバイトを辞めた。瑞穂さんのことを忘れなかったのは彼女が印象に強く残ったからではなく、就活の選択肢に化粧品会社が入ったからだ。それが俺にハマッたのか何社からか内定を貰った。
瑞穂さんはそのきっかけをくれた人として一種の形容として覚えてはいたが、彼女個人に思い入れがあるわけでもなく姿形の記憶はぼんやりとしたものだった。
彼女にとっても俺に覚えていて欲しいと思わない醜態だっただろう。最も彼女自身、覚えてもいないくらいの酔っぱらいだった。
──ところが
新人研修において、彼女と再会することになったのだ。彼女は通称、学術と呼ばれる商品開発部門の主任としてそこにいた。
ぼんやりと見覚えがある気がしたが、瑞穂さんだと認識するには随分と時間を要した。なぜなら、彼女は当然ながら酔っていなかったからだ。それと、思ったより若かったからだ。彼女の部門の説明はとても専門的で彼女自身ざっと説明を終えるとすぐに席を外した。「わかる様にまとめてあります。こればかりは毎回覚えるしかないので」にこりともせずにそう言って、配った書類を指先で叩いた。薬事法や表記、処方、原料についてざっと書かれたものだった。
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