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俺が、30過ぎても40過ぎても、ずっとずーっと一緒にいたい人。
『私だって、普通に恋愛したいし、結婚願望だってある! でも無理よ。毎日そんなことに時間かけて、自分偽ってまで……』
瑞穂さんは初めて会った日、こう言ってた。結婚願望もある。俺の前で瑞穂さんは自分を偽ってないと思う。俺だってそうだ。
「あーあ、僕も結婚したいなあ」
幸せな空気が流れすぎている職場でそう言うと
「しろよ」
と、あっさりと返って来た。まさかの結城さんから。
「いいものですか?」
無言だけど、全肯定な表情に俺も顔が赤くなるのを感じた。(ヤバい。ドキドキする)
「そうですね。することにします」
そう言うと、頷いてくれた。
吉良さんが横で肩を揺らしていた。
────
「瑞穂さん、俺ね。料理も出来るし、掃除も出来るし、貯金も出来てるよ」
俺のパーカー着て、スルメ噛んでる彼女にそう言うと
「えらいえらい」
と、撫でられた。気持ちいい~。じゃなくて!
「新しい契約! しませんか?」
「へえ?」
「結婚して!」
瑞穂さんが慌てて噛んでたスルメを置くと正座した。
「よろしくお願いいたします!」
「あはは、律儀~」
「全然でしょ。こんな服だし!」
「こんな服って俺の服だし!」
「私、一生結婚出来ないと思ってた」
「遅くなってごめんね」
その日のキスは涙とスルメの味がして、全然ロマンチックじゃなかった。
──だけど、俺たちはそれからしばらくして新たな契約を結んだ。ペットでも、ヒモでもない対等なやつ!
「徳文くんって老けないよね」
「そりゃあ、ちゃんとお手入れしてるからね」
俺の頬を撫でて、瑞穂さんが得意気に笑って見せた。
────end
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