vol.2

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ふっちーは入学前からバスケ部の練習に参加している。一足先に一人暮らしを始めたので、私よりちょっとだけこのあたりに詳しい。 手を繋いでぶらぶら街を歩く。この辺りは学生が多い。 「あ」 ふっちーが誰かを見つけて手を上げた。 「おう、彼女?」 「そ。おんなじガッコ」 「へぇ。宜しくね。えーっと……?」 「あ、はじめまして。石橋紗香です」 「はは、同い年だって。宜しくね、紗香ちゃん」 そう言って笑う男の子はお洒落で爽やかだ。わあ、大学生って感じ。その男の子が去って行った方を視線で追う。ふとその子が振り返り、目が合って気まずく思っていると、その子は気にすることなく 「晩飯どうする?」 と、聞いた。 「ん、今日はいいや」 ふっちーが答えると、手を上げて背を向けた。やっぱり背中を見ちゃう。彼が見えなくなるとふっちーに向き直った。 「……もう仲いい子が出来たんだね」 「あー、あいつ、津守。同じアパート」 「あ、あの人かぁ。すごい爽やかな人だね」 「……」 一瞬、ふっちーが複雑そうな表情をした。 「どうしたの?」 「あいつ、ああ見えてそうじゃないから、あんまり……ああ、いいや。お前には大丈夫だろ」 ふっちーはそこで言い淀んだ。私には大丈夫ってどういう意味だろう。ああ見えてそうじゃないって、どういう意味だろう。
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