vol.2

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ふっちーのアパートのインターホンを鳴らす。ドア越しにスコープを覗く気配がして、チェーンの外される音がした。 「入って」 と声が聞こえて、ドアを開けた。 「来ちゃった」 どう?どう?フルメイクの私!そんな気持ちでふっちーの様子を伺った。 「ああ。あんま、時間ないけど、何飲む?」 「……あ、これからバイトだった?」 「いや、ここの奴らと晩飯。もうちょっとしたら集まることになってる」 「そう……」 グラスに入れた冷えたスポーツドリンクを受けとると、ローテーブルの前に腰を下ろした。 「で? どした?」 メイクしたの、見せようと思って……なんて、自分で言うのは切ない。から、 「会いたいなって思っただけ」 「ふーん、そっか。どっか、行ってたのか?」 ふっちーから真希さんの予想通りの言葉が出て、メイクに気付いてくれてはいるのだと思った。 「え、いや、どうして?」 メイクのことに触れて欲しくてそう聞いた。 「いや、いつもと違うから」 「あ、うん。サークルに行ってて……」 「あー、そっか。楽しそうだな」 「うん。仲良しの先輩が出来て、楽しいよ」 「そっか。良かったな」 「……うん」 ふっちー、さっきからチラチラ私のグラスを見てる。早く飲めってことだと思う。飲んだら帰れってこと、だと思う。 いつもと違う。から、どうなのか……聞きたかったのに。
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