vol.2

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その人は、テニスサークルに熱心に勧誘してくれた人だった。 「一人?」 「え、はい。北山さんは、お買い物ですか?」 「うん。ちょうど紗香ちゃんと話がしたいと思ってたんだ。一緒にいい?」 北山さんはそう言うと、私が一人で入ろうとしていたカフェ入って行った。 しまった。誰かと待ち合わせって言えば良かった。一人で入ろうとしていたとこを見られたので、今さら断ることも出来なかった。仕方がなく、北山さんの後ろに続いた。大丈夫、だよね? 「奢るし、好きなの食べて」 そうは言われても、楽しみにしていたケーキにもテンションが下がってしまう。自分のお金でいいから美味しく食べたかった。定番のいちごのケーキとミルクティーを頼むと、北山さんはコーヒーだけを注文した。 「サークル、何でやめちゃうの?」 そっそく切り込んでくる。 「なかなか参加出来なくて、友達も出来なかったですし、テニスのルールもわからないし、誰も教えてくれないし、テニスしてるのみたことないし、思ったのと違うなって思いまして」 つらつらと言い訳を並べると、北山さんが笑った。 「はは、尋問してるんじゃないよ。ゆるーいサークルだし別にやめなくても、参加したくなったらしたらいいんじゃ? て、思ってんだけど」 あー、ゆるいのは、下半身では?とか言ったら怒られるのかな……。
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