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ふっちーのアパートの部屋は電気が消えていた。まだ、誰かの部屋にいるのかな。
マンションの近くまで来ると、先に工藤と朱里の姿が見えた。楽しそうに笑い合ってる。これから二人で朱里の部屋に行くのだろう。工藤は、アパートの人とご飯食べなかったんだ。
工藤と朱里だって、私たちと同じくらいの付き合いだし、工藤もバスケの練習してるし、バイトだってしてる。アパートだって同じだ。……なのに、何で?
忙しくったってさぁ、会おうと思えば会えるんだよ。会おうと思えばさあ。
北山さんの言ったことに腹が立ったのは、思い当たるふしがあったから。つまりは、図星だ。飽きるとか、うざいとか、重いとか。全部、そうかもと思ってしまう覚えがあった。
ふっちーは新しい出会いに夢中だ。
『追いかけて来たのに疎遠になったら、むなしいね』北山さんの言葉が頭の中で響く。
なによ、そんなの、どうしたらいいのよ。数回しか会ったことのない北山さんですら、メイクに気付いてくれたよ。
もやもやするのが嫌で出掛けたのに、余計にもやもやしてしまうことになった。もう、もやもやどころではなく、心が鉛のように重くなってしまった。
新しい出会い。それってそんなにいいものなの?
せっかく買ったスカートも放り出して、私はじっと鳴らないスマホをみつめていた。
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