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「あ」
ふっちーは私に気づくと、一度だけ隣の女の子に視線を走らせる。私に向き直り
「うす、おまえも朝飯?」
何もないかのようにそう言った。隣の女の子は、私に気がつくと、こちらも何事もないかのように、にっこり笑って私にペコリと会釈し、
「雅紀くん、私、先に帰るね」
と、レジへと向かおうとする。
「いいって、菜月、重いから俺が買って帰る」
「……いいの?」
「ああ」
「ありがとう、じゃ、先に帰るね」
残ったのは、沈黙と気まずい雰囲気だった。チラリとふっちーの顔を伺うと、ふっちーもじーっと私を見ていた。
「ふっ、すっぴんじゃん。お前」
「……」
本当だ。部屋着に素っぴん。あの子は……スカートじゃなかったけど、足のラインが出る細身のパンツ。むしろ、スカートより色気があるかも。すごくスタイルが良かった。メイクしなくても、すっごい可愛い人だった。いや、綺麗って言えばいいのかな。
何も言えなくて、ふっちーを無視するみたいに、今から食べる分くらいの朝ご飯と飲み物をかごに入れ、レジへと向かった。
ふっちーは買い物を終えて、外で待っていた。私が外へ出ると、また眉を下げた顔だ。ふっ、と笑うと私の化粧をしてない頬に触れる。私はされるがままになっていた。送ってくれるつもりなのか、私のマンションの方へと歩き出した。
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