vol.2

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くいっとふっちーのTシャツの裾を引っ張って止めた。 「いいよ。さっきの同じアパートの子、待ってるでしょ?」 「あー、いや。あいつは同じアパートじゃない。アパートの子の友達」 「……そうなんだ。誰かの彼女?」 「違う。女子の友達」 「そう」 「……何だ?」 「可愛い子だね」 「はは、だろ?」 「うん。じゃあ、」 私はふっちーを追い抜くとさっさと歩いた。 『だろ』ってなんだよ。お前のモンかよ。悪かったな、素っぴんで。素っぴんの頃からの付き合いだろうがよ。あの子は……あの子は可愛い格好してたなあ。 そりゃ私だって会うってわかってたら、可愛い格好だって、メイクだってしたよ。 ふっちーにもだけど、あの可愛い人にこんな姿を見られたのがいたたまれなくて、恥ずかしかった。 私はせっかく買った朝ごはんに手もつけず、冷たいアイスティーが胃に落ちるのだけを感じていた。 同じアパートの子じゃないのに、朝ごはん一緒に食べるの?夜は送って行くの? 今まで『雅紀くん』なんて、ふっちーを下の名前で呼ぶ子はいなかった。 『菜月』ふっちーが下の名前で呼ぶ女の子も、私だけだった。朱里のことだって今西って呼ぶのに。 これは、あれだな。きっと、ふっちーは心変わりをしたんじゃないだろうか。でも、大学まで追いかけて来た私に、そんなこと言えないんじゃないかなって。 「はは」笑うしかなかった。
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