vol.2

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「身体ばっかりだって思われたくなかったみたいね。それで、逆に私が飽きられたのかなって寂しくなっちゃって」 「で、どうしたんですか?」 「『女にも性欲はある!』って言った。だって、向こうがしたいからするもんじゃないでしょ。同意ってそういうことでしょ」 「……カッコいい!」 「はは! ぶっちゃけちゃった。秘密ね」 真希さんは笑ったけど、そうか、私から誘ったっていいじゃん。 「嫌な時は嫌って言うしさ」 「あ、そっか、そうですね」 ふっちーに嫌って言われたらどうしよう。 「うん、頑張って! もうすぐ彼の誕生日なんでしょ? ドキドキさせちゃって、惚れ直しさせちゃえ!」 惚れ直す?そんなことが出来るのかな。わかんないけど…… 「頑張ってみます!」 真希さんにお礼を言うと、エレベーターへと向かう。 今度は夕方から魚住さんとの約束があった。来週から始まる短期バイトの詳細を聞くことになっていた。一旦部屋に帰ろう。と、開いたエレベーターに乗ろうとすると先客があり、その人が下りるのを待った。 「「……あっ」」 そこから下りてきたのが、まさに魚住さんだった。 「え、どうしたんですか?」 「……あー、紗香ちゃんとの約束まで時間があったから、彼女んとこ寄ろうかなって……」 バッと後ろを振り返った。そこにドアは一つしかなかった。 「ええ!? 真希さんの彼氏って魚住さん!?」 確かに、同じバイトだった。さっきの会話が急に生々しく感じて、私は顔を赤くしてしまった。
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