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「あと、同じアパートの津守もこのサークルなんだけど、あいつは滅多にこない」
「出不精だから」
「出不精だからね」
二人が津守くんと親しそうにそう言い合っていた。本当に、アパートで仲良しなんだ。いくらかは、またほっとする。
私たちが話していると、別のグループの女の子が来て、菜月ちゃんにパンッと顔の前で手を合わせた。
「菜月、ほんっとありがとう! 」
「え、はは。いいよ、いいよ。うまくいったの?」
「うん。おかげさまで。ありがとう! 今度絶対にご飯おごるから!」
「もう、いいってば」
菜月ちゃんが、手を横に振って遠慮すると、その子はもう一度「ありがとう」と言ってその場を離れた。
「菜月、ほんっっとに良かったの?」
芽以ちゃんが、訝しげに菜月ちゃんに詰め寄った。
「もう! 本当だってば」
「でもさぁ、あの子だって……」
「芽以! いいの。本当、何とも思ってないから」
「……そう? ね、今度は絶対譲っちゃだめよ?」
「だから、好きじゃないから譲っただけだってば」
二人の会話を聞いていいのかもわからず、私は視線をさ迷わせた。……何の話だろう。それに芽以ちゃんが気づいたのか、
「ごめんね、紗香ちゃん。菜月、気使いすぎて、腹立っちゃって」
「使ってない」
「そんなこといって、気に入ってたの知ってる」
「いっか。って、思えるくらいだったの!」
菜月ちゃんが、そう言うと、芽以ちゃんがため息をついた。それから
「紗香ちゃん、これからサークルで仲良くしたいから聞いといて。菜月はこんな性格だから」
と、話し始めた。私が聞いていいのだろうか。菜月ちゃんは、「もー」って、苦笑いした。
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