vol.2

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──── ── 入学前するちょっと前。 俺と工藤は一人暮らしする家を同じアパートに決めた。正直、新生活に不安もあったからだけど、4人で集まりやすいかなと思って決めた。工藤と今西、紗香と俺、一緒に目指した大学に揃って合格してことは本当に嬉しくて楽しみでしかたがなかった。 が、想像よりずっとキツかった。練習もレベルも。さすが、強豪。予算かけて外部からコーチを雇うくらいのチームなのだから、当然だ。毎日ヘトヘトになる。工藤と二人 「キツいな……」 と、笑いあった。色んな強豪校からの寄せ集め、プライドもズタズタ。初っぱなから心が折れることもいっぱいあった。だけど、春の大会、それが終わると新人戦。へこたれてなんていられない。 部活は、金もかかる。すぐにバイトも始めた。 だけど、夢だった生活だし、楽しかった。 紗香とも、いつでも会えるし。 新築のアパートは全員1年生ですぐに仲良くなった。ほぼ、工藤の人懐っこさのお陰だともいう。 最初、津守だけはあんまり人と関わるのを嫌がった。が、そんな津守に、気にすることなく、寄ってく工藤のポテンシャルの高さが勝利して、仲良くなった。 この津守はかなり保守的な男で、入れる、入れないをハッキリ分ける。つまり、裏の顔と表の顔の差がすげえ。一度、心を許し、中に入れてくれたらそこからは……母親みたいな奴だった。 一人暮らしで衣食住に戸惑う俺たちに、どこのスーパーが安いとか、便利とか、色々アドバイスをくれる。それでも見かねたのか、遂には各実家の救援物資(つまりは、各出身地の名産品の宅配)をどう調理していいか戸惑う俺達の代わりに調理し、分配し始めた。 「光熱費、お前が損してねえ?」 「や、食材ちょっとづつ貰ってるからトントンだ」 そう言って笑った。津守んちにはいつも巨大な保存容器が集まって、洗ってはまた調理済みの料理を入れてもらう。料理出来るとか、すげえ。
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