vol.2

46/65
前へ
/192ページ
次へ
他のバイトのやつに聞いたら、そんなこと俺にしか言ってないらしい。何で、あんなやつに絡まれなきゃなんないんだ。 だけど、ちょっとだけ、ほんのちょっと引っかかることがあった。 誰かに紗香の話をすると必ず『お前を追いかけて来た彼女』って言われることだ。俺は紗香がいなくても、この大学に来たと思う。紗香はどうだろう。同じ高校に行きたかったって言うから、大学は一緒に行こうって言った。深く考えなかったけど、紗香はどうなんだろう。 俺がバスケしてる時、バイトしてる時、紗香は何してんだろう。そりゃ講義は出てるだろうけど。いつ連絡しても、すぐ来る。いや、嬉しいんだけど、それって、どうなんだろう。 工藤に聞いてみると 「朱里、バイトも始めたし、高校から続けてる書道のサークルに入ったんだ。部活ばりに本気のとこで、展覧会に向けて頑張ってる。楽しそうだよ。ま、お陰であんま会えない」 と、残念そうでも嬉しそうに言った。そっか、今西は今西で工藤とは違う大学生活を送ってんだな。 紗香は、いつも俺に合わせてくれていた。あいつ、あんなんだったか? 「彼女、大丈夫なのか? お前しかいないじゃん」 津守にもそう言われて、心配になった。俺しかいないのも悪い気がして、紗香は紗香で大学生活を楽しめばいいんだけど。そう思っていた。
/192ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1118人が本棚に入れています
本棚に追加