vol.2

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紗香がバイトも始めて、サークルにも入って、「楽しい」って言い出した時はほっとした。いつも気を使わせてたし、この大学に引き込んだのは俺だったから。単純に楽しいなら良かったなぁと思ってた。 紗香が突然アパートに来たことがあった。いつもはしてるかしてないか、わからない程度の化粧がはっきりわかるくらいで、可愛い。可愛いけど、何で?って感じ。 たまたま今西に会った時、紗香ほどではないけど今西も化粧してた。 「何で?」 って聞いた。 「そりゃあ、もう大学生だし。大人になると素っぴんの人の方が少ないでしょ?」 「んじゃ、もう化粧しない日はねーの?」 「うーん、した方が可愛く見えるしね」 「そっか? お前も紗香もしなくても可愛いじゃん」 「……ふっちー、良い人だね。それ紗香に言ってあげてよ、喜ぶよ。あ、でもメイクしても可愛いってちゃんと言ってあげてよ?」 「あー、うん」 そう言うもんなのか。何かちょっと寂しいような複雑な心境。 ── たまたま朝に買い出し当番で、菜月とコンビニ行った時に紗香に出会った。朝だったからか、化粧してなくて、ちょっと嬉しくなった。 「なあ、菜月も化粧してるよな?」 アパートに戻ってから聞いてみる。 「するよ。ちょっとでも可愛くなりたいもん」 「ふーん」 菜月は同じアパートの芽以の友達で、単に津守に餌付けされただけだ。大学生活の初っぱなにモテ過ぎて、そういうのに疲れたらしい。こうやってみんなでワイワイしてるのが楽だと言った。律儀に晩飯食ったら家に帰る。菜月の家まではちょっと距離があるから、それを唯一彼女いない津守が送ることになって、「面倒臭い」っていつも言ってる。でもちゃんと送るのは、菜月が津守の内側の人間だから。でも絶対に泊まったりしないのは津守の引いたラインを菜月もみんなも知ってるからだ。それぞれがちゃんと尊重してる。
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