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知る事から その1
入学式もトラブル無く終わり、俺は入学を望んでなんか居ない学校を後に街を歩いていた。見た事も無い街、知らない人、知ってる言語、なんかあれだ、夢の中をふらふら散歩しているみたいだ。
ふと、ガラスに反射した自分の顔を再確認してみた。高校生 フリー素材と検索したら二番目に出てくる様な顔、設定には確か平凡としか書いて無かった筈だがそこから導き出した
顔だとしたら神様も良く頑張ったもんだと褒めてやりたくなる。まあこの世界を神様が創ったとすればだがな
「おーヒロじゃん。入学おめ!」
誰かの声が脳を無駄に働かせた。声の聴こえた方を振り返るとそこには1人の少女が立っている
「よ!久しぶり!卒業式以来?元気?てかミリオン行かね?」
いきなり俺の手を掴んで、その少女は俺の知らない単語を次々と発していった。典型的なツインテールに青の制服、楕円形の瞳……か
胸はまだ小さいみたい
「なーに胸なんか見てんのよ!えっち!」
「ひゃあっん?!」
少女にとってはいつもやっている事何だろうが、俺はその平手打ちが初見だ。痛い……思ったよりずっと
「あの………失礼ですがあなた………誰でしたっけ?」
俺の口から出た一文を少女は聞くと、途端に口をぽっかり空けた。が、回答は早い
「やだもー!忘れちゃったの?中学で仲良しだった1学年下の 田中雪子だよ!同じ図書委員だったじゃん」
「田宮雪子………?」
もちろんそんな人物は知らない。しかも、ただ知らないだけでは無く、設定にもそんな少女は書いてなかったのだ。つまりこの少女がどんな性格でどんな特徴があるのかが全く分からないといった具合である
「入学式で疲れちゃったのー?じゃ明日でいいや。じゃねー!」
「じゃあ………」
走り去る雪子の姿を眺めながら、あの設定を必死に思い出していた。あの設定に書かれた
人物は確か………8人だった。つまり8人は何とかヒントがある。だが、どうにもハッキリとは思い出せ無い。曖昧だ。困った事に
「おーい!そこの人ー!」
「わっ!?ちょ!ぶつかる!」
正面から誰かとぶつかった。これが女性なら
あらラッキー♡と行くのだが、この感触は残念ながら男らしい
「ごめんなさい!いきなり!で、人物を探してるんですけど、あなた"中田達"って人知りませんか?」
「中田達?」
その単語には電流が流れていた。俺の脳に一気に刺激が与えられる。目眩がしてきそうだ
「お前………!何故その名前を?!まさか!
」
「ふふーん、東健児って言えば分かるかな?」
その名前はこの世界に来る前から知っている。そうこの世界の設定を考えた男………
キモオタの 東健児
「とりあえず移動しようか。みんな見てるし」
「あっ」
気付けば周りが騒がしくなっていた。どうやら正面からぶつかった際に健児を馬乗りしてしまったらしい。そう………まるでこの男を犯すかの如く
「波乱………だねえ。楽しいねえ」
嬉しそうに手を握る健児に俺は顔を真っ赤にして、何も言えなかった
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