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知る事からその4
知る事から その4
帰りの会も掃除も終わり、校舎を出でて校門へと俺は歩いていた。周りには同じ学年の生徒達が会話に花を咲かせている。
今日気になった奴は2人、体育で1騒動起こした" 野中隴"それから足が速すぎる"野栄戮"
か。それに野栄はあの態度からして、喧嘩もかなり出来るだろう。そんな奴をあっさり転ばせた主人公設定の"田中澄"あれは奴の主人公補正が効いてるのか………?とにかく様子を見るか
「裕〜!一緒に帰ろー!」
このまるでミントタブレットの様な爽やかかつ、少し高めな声はアイツか
「その声どうにかならないか………苦手なんだよ」
「え〜無茶言わないでよ!」
一方的に肩を組む海都を笑う者も居て、睨み付ける者も居て、その中を2人で堂々歩く。頭がおかしいのでも肝が据わってるのでも無い、俺達は前世の仲良し野郎それだけだ
「で、そっちはどうよ。気になる奴は」
海都はバックから1枚の板チョコを取り出し、その整った歯で齧った
「野中隴と野栄戮って奴かな。後は主人公くんそれぐらい」
「おお、面白い2人じゃん。野中隴はクズって設定書いた奴で野栄戮は確か………やべぇしか書いてない気がする」
クズ………か。確か体育の時にぶつかってきたのはアイツだったな。しかし、野栄も弱者がどうのこうの言って喧嘩煽ってたし、あれも別のタイプでクズな気がする
「委員長は"真宮希"って奴がなってそれは良いけど副委員長が野栄だよ。不安で仕方ない………」
「ふふ、面白いクラスじゃ無いの。真宮希は
ヒロイン、野栄戮はチート案外いい感じだと
僕は思うよ」
「そうかな……て、真宮希ヒロインだったの!?やけにおっぱいでけえなとは思ったけど」
「あはは………ちょっと恥ずかしい」
海都は顔を赤くしながらも満更でもなさそうだった。ヒロインか、ヒロインとはどんな能力何だろうか。すごい男を惚れさせるとかじな無いよなぁまさか
「こっちのクラス委員長は僕だ。副委員長は
高梨明日香。何か普通過ぎてつまんないや」
「普通ねえ」
そんな会話をしながら歩いていると、鉄パイプや足場の部品が無造作に置かれた、空き地の前まで来ていた。別に用事も無いし、通り過ぎようとしたその時
「戮ぅうう!?てめぇよくもこないだは俺の弟泣かしてくれたじゃねえか?あ?」
気になる名前が聞こえてつい俺は立ち止まってしまった
「ああ、あれ?縄跳びで足引っかかけようとして逆にぐるぐる巻にしちゃったのか。ちょっと背中足置いただけでえーんえーんって泣いてたなぁ」
「黙れえ!!今日は1人じゃねえ、お前らやっちまいな!」
ポケットに手を突っ込んだまま、仁王立ちする野栄戮に鉄パイプを持った2人が襲いかかった……と思いきや
「「なーんてえ」」
振り上げた鉄パイプは地面にそっと置かれ、2人は左右に避ける。そして、真ん中から怒鳴りつけた男が鉄パイプを振り上げた
「フェイント作戦じゃあああ!」
しかし、鉄パイプは野栄の右手で簡単に掴まれてしまった。まるで落ちてくるボールをキャッチするみたいに
「おーらよ」
「んぬぐふぁああ?!?」
野栄は蹴った、怒鳴った男の腹を。男は宙を何回転かし、地面へ叩きつけられた
「嘘………でしょ………」
怒鳴りつけた男は動かなくってしまった。頭からは血が垂れている
「てんめえ!!!」
「良くも野田さんおおお!!!」
残った2人が拳で応戦するも、倒れたのはその2人だった。俺には何が起きてるのか全く理解出来ない。何の為にこんな事をする?何が楽しい?てか暇なの?やはり理解出来ない
「はぁ………つまんないや。お、ちょうどいい所にクラスメイトみーつけた。ちょっと殴らせてー」
野栄はターゲットをこっちに変えて拳を振り上げたまま、向かって来た。大怪我確実、しばらく学校は無理!そんな予想をしてた俺だったが
「ふんっ!!!」
隣の海斗の蹴りが野栄の腹を直撃し、野栄は
後方に吹っ飛ばされた。た、助かった……
「お前………なにも…の…」
「コイツには手を出すな。それだけだ」
海斗がにこりと笑いながら、野栄の方を見ると野栄はぺたんと地面に腰を落とした。初めて見る野栄の泣きそうな顔だった
「さて行こうか。喧嘩は嫌いだからね」
「ああ………」
その力は何だよと聞きたかったが、聞けなかった。何だかそれを知ってしまったら、俺は
とてもショックを受けそうな気がして。
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「あ、エロ本だ」
田んぼの側に捨てられているいやらしい本に
海斗は興味を示した様だ。てか懐かしいな。
誰かが何の目的で捨てていくか分からないが
こういう場所にはよく落ちてる。俺も前世の思春期には世話になったもんだ
「そんなもん拾ってどうする。大体お前は二次元が好みだろう?」
「えー酷いなあ、一次元だって抜けなくは無いんだよ。ほら、こことかめっちゃ【自主規制】だし」
海斗が広げたそのページには女性が【自主規制】を【いやらしい単語】に【いかがわしい行為】していた。確かに【非常に卑猥な言葉】だが今更【自主規制】する気は無いなあ
「でも裕には物足りないかーだって【いやらしいサービスを行う店】巡り好きだったもんね」
「お前だって俺の目の前で【いやらしい行為】してるイラストで【汚らしい処理行為】してたじゃ無いか。お互い様だろう?」
「そ、それは………」
しかし、ここは田んぼの側。人が通らない訳も無く
「裕……何してんの」
声のする方には冷たい目をしてこっちを見る田宮雪子が立っている
「ああ、丁度良かった。お前にこれやるよ」
「え……うん」
その足元に俺は一冊のエロ本を投げた。【いやらしいポーズ】の表紙を彼女は拾い、その
内容を一枚一枚捲って確認していった
やがて白い煙を上げそうなぐらい、赤い顔をして地面に本を落としてしまうのだった
「ば、馬鹿っ!!なんてもん見てんの!?
この変態!ロリコン!頭の中レイプ野郎!」
「拾った奴も大概だろうが!このピュアツインテ野郎!」
「セクハラね……最低」
その場から離れない雪子の後ろにいつの間にか真っ黒い鞠の様な瞳をした真宮希が立っていた。その制服は胸の所だけがやたら引っ張られており、一発で彼女だと分かる
「違う!投げたのは俺だけど最初に見つけたのは俺じゃ無い!」
「うるさいわね!あんたが見つけたに決まっってるでしょ!」
「どちらにせよ、セクハラには変わりないけどね」
「こりゃ面倒な事になっちゃいましたな……」
わーわー、わーわー騒いでる俺達を通り過ぎる人々はくすくすと笑った。俺は改めて足元を見る。やはり【女性の裸体】が表紙の本は
無くなっていない
そして、言い争いは頬の攻撃まで激化したその時だ、どこからか足音が聞こえる。誰だ?
「ちょっーと待った!君たち争いはやめなさーい!」
一斉に声のする方を振り向くとそこには息を切らした田中澄の姿があった
「な、何があったんだい?随分と白熱していたみたいだけど」
「コイツが【卑猥な単語】な本を私に無理やり見せてきたんです」
「違う、勝手に見たんだ」
「いや、その前から見せようと考えてたに違いないわよ」
「僕は拾っただけ」
全員の言い分を聞いて、田中澄は頭を掻く。
そりゃしょうがない、こんなめちゃくちゃじゃな
「もういい、私帰る。後はあんたらで勝手にどーぞ」
離脱しようと真宮希はスクールバッグを肩に担ぎ、俺達から数歩踏み出す
「ああ、待ってくれ!まだ話が……ああ!」
「きゃあっ!」
それを引き留めようと踏み出した田中澄は石に躓いて、転んでしまった様だ。しかし、目の前には真宮希が居る。つまりどうなると言えばまあ
空を見る姿勢の真宮希に田中澄が重なる形となってしまった様だ。その両手は豊満な二つの乳房を鷲掴みしてしていた
「さ」
「最低!!!男なんか大嫌いっ!!!!」
その言葉を叫び、真宮希は遥か彼方に消えた。さっきまで彼女が居た所には何かを掴む姿勢のまま、硬直する田中澄の姿が
「あれがラッキースケベって奴か」
俺は海斗に投げかけた
海斗は小さく笑って
「多分。主人公だもの仕方ないさ」
と返した
田宮雪子はと言うと、自分の胸をしばらく触って「高校生のお姉さんか」と呟いた
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