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その行動がおかしかったのか、青年は大笑い。少し失礼じゃないかと思いつつも、口には出さなかった。
ひとしきり笑い――青年は。
「ここから東の果てに花園がある。詫びといったらなんだが……そこに連れて行ってやるよ。お嬢さん、花好きなんだろ」
「――え。どうして知ってるの?」
にっと悪戯っ子のような顔をする。なにか面白い遊びでも見つけた子供のように。
「さあ、どうしてでしょう」
わけがわからない。
子供の頃はまだ自由に夢を口にしてたように思う。あの頃は楽しかった。みんなが肯定してくれて、叶うことを信じてくれて。しかしいつからか夢をバカにされることを恐れ、深い深い心の海へ沈めてしまった。
――誰も触れないように、触れられないように。
どうして。
とうして、いともかんたんに触れるの。
今日、はじめて会ったばかりの知らない人が。
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