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視線を彷徨わせた末に無言のまま頷く。
きっと抵抗することに意味はない。青年には不思議な力があって、従わせることなんて造作もないことだろう。
――この人はそんなことしない。力があるからとかそんな問題じゃなくて……うまく言葉にしようとすればするほど、言葉は逃げていく。でも、これは確信だった。
青年がすぐ近くにまで降りてきて、まるで舞踏会に誘う王子様のように手をさしのべる。何度も何度もおとぎ話で夢見た憧れたあの光景が目の前にある。
「――お手をどうぞ、お姫様」
一抹の不安と恐怖。
都合のいい夢。
もしそうだとしてもいい。だって、もうこんな夢は二度と見られない。なら……賭けてみよう。
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