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2. 二夜目
朝になっても電気と水道は復旧しなかった。唯一無事なガスのみで、朝ごはんの準備をわたしは溜息交じりで行う。といっても、たまたま棚にあったカップラーメンに湯を注ぐだけなのだが。
その時、私は些か、ぼーっとしていたように思う。そんな私をまたしても突然の揺れが襲い、私は思わず無様にも、キッチンマットの上に尻もちをついた。
「きゃっ、あいたっ!」
びりり、とした痛みが私の右手を貫く。どうやら、尻もちをついたとき、床についた手首を捻ってしまったようだ。
「大丈夫ですか?」
私が床に転がったのを見た香菜が、キッチンに飛んでくる。そして、赤く腫れ上がりつつある私の手首を見て一言言った。
「捻挫ですね、動かさない方が良いですよ」
「困ったなあ、水の配給が近くの市民センターであるって、さっき広報車が回ってたから行こうと思ったのに」
すると香菜が、叫んだ。
「水の配給だったら、私、並んで来ます!」
「あらあら……お客さまにそんなことは」
私は最大限の皮肉を込めて、そう反論したが、香菜は昨夜のしおらしい様子はどこへやら、途端に生き生きとしている。充電が切れそうなスマホでネットニュースを見る限り、今日も電車は動きそうにない。よって、気まずい雰囲気のまま、このマンションの一室で1日私と顔をつきあわせているよりかは、よっぽど気が楽だと彼女は判断したのだろう。
……そして考えてみれば、それは私も同じだった。
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