探偵団結成

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探偵団結成

 俺もずるくなってきた、自分の負担を軽くしようと仲間を集めることにした。同じクラスの慎介(しんすけ)拓之(ひろゆき)、そして夏希と仲の良い遥加(はるか)に声をかけた。集合場所は仕方がないので俺の部屋を提供することにした。  俺の親父は市の企業局に勤める公務員で、家は二階建ての一軒家。この辺りの家はほとんどそうだ。二階に俺と兄の部屋がある。階段を上がって廊下の突き当りの六畳の和室が俺の部屋で、廊下の途中にある六畳の洋間が兄の部屋である。二人はお互いの部屋には絶対に入らないと約束していた。当然、大声を出して騒ぐことなどできない。四人にはそのことをよく言い聞かせて部屋に案内した。  渡部慎介はバスケットボール部の主将で背が高い。百七十七センチある俺が見上げるくらいだから百八十五センチぐらいはあるかもしれないが聞いたことはない。しかし、怖がりで狭いところや暗いところはだめである。山本拓之の家は農業をしているが、本人は獣医になりたいらしい。彼の前でブタは禁句である。廣田遥加の家は魚屋、時々手伝いで店に出るらしく明るくて元気のいい看板娘である。田中夏希は好奇心が強く、何事にものめり込む癖がある。美人なので男子のファンは多い。  部屋に入るとすぐに夏希がこれまでに分かったことを説明し始めた。 「六年前、新鞍福利という生徒が行方不明になったの。警察や地元の消防団の人達が探し回ったけれど、何の手がかりも見つからなかった。その子は私たちと同じクラスなの。私たちは彼を探す義務がある」 「ちょっと待ってよ。話しが飛躍しすぎだと思うんだが」 慎介が口を挟んだ。  そうそう、それがお前の役目だと俺は慎介の方を見た。しかし、その程度では夏希の暴走は止められないぞと念を送った。 「そんなことないでしょう。今時、事件でも事故でも、死んでいたら死体が見つかるし、生きていたら何らかの情報はでてくるものよ。それが六年間、何もないというのはおかしいでしょ」 「そうねぇ。それは変だわね」 遥加が相槌を打つ。  俺は拓之の方を見て何か言えと目くばせをした。 「何かできることがあれば俺は手伝うよ」 「おいおい、それは違うだろ拓之」と言いたかったが声には出せない。 「智弘も調べるのに賛成だよね」 夏希は早速、俺に振ってきた。俺は慎介を見たが、慎介のやつ目をそらしている。しかたがない、しばらく考えているふりをしてから 「みんなが賛成するなら、俺も手伝うよ」 「けど」と続けようとしたが、その言葉を発する前に夏希は 「じゃ決まった。今後のスケジュールを決めようね」 もうだめだ。どんどん夏希のペースにはまっていく。俺の頭の中ではこれまでの苦い思い出がまた蘇ってきた。しかし、そんなことは誰も気がつかない。  夏希の計画はこうだった。まず新鞍福利を知っている人を探すこと。当たり前と言えば当たり前のことだ。六年前といえば、校長や教頭も三年前と二年前に榛原(はいばら)中学校に来たので知っているはずがない。六年前からいた先生をまず探そうということで今日は解散した。
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