1人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
最初の手がかり
次の日の放課後、俺は佐々木先生に六年前からいた先生を調べてもらった。
一人いた。理科の佐藤先生だ。さっそく俺達は理科室に押しかけた。
佐藤先生は理科部の顧問をしている三十代後半の男性で、生徒に優しいと評判の先生だ。
実験室の方にいたので、夏希が事情を説明し準備室で話を聞くことにした。
「そうそう、あの時は誘拐か、家出かと大騒ぎになってね。教師も手分けして探し回ったよ。夏休み中だったので、時間を見つけては捜索したんだが、全く手がかりはつかめなかったね」
「福利君の住所はわかりますか」夏希が尋ねた。
「職員室で調べてくるからちょっと待ってて」
そう言って佐藤先生は職員室へ戻って行った。
「住所がわかったらどうするんだ」俺は夏希に聞いた。
「どうするって。家に行くよ」
「まあ、そうだろうけど」
俺は、その後どんどん深みにはまっていくのが心配なんだ。
「お待たせ。大津市美空町二の十六だね。それとね、彼は小学校の頃から大人とつき合っていたという噂があって、何か事件に巻き込まれたのではないかと心配したんだ」
「わかりました。ありがとうございます」
礼を言って、俺達はその足で住所のところに向かった。
学校からそう遠くないので歩いて行くことにした。歩きながら、俺は夏希に警察じゃないんだから無茶な行動をとらないようにと注意した。今回は行方不明という大事件なんだから。
「家に誰かいたら何と言うつもりなんだ」
「何と言うかって、そりゃ行方を知りたいって」
「だけど、行方は分からないんだろ」
「だから。その行方を調べたいって」
「警察が調べても分からなかったんだぞ。中学生の俺達が調べますと言ったって聞いてくれるか」
「そりゃそうだけど。何とかしたいから……」
「それじゃ、家の人がいたら俺が話す。いいか、全部俺に任せろ」
夏希は黙って頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!