プロローグ

2/2
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「おや、日に二回……それもこんなに続けて鳴るとは珍しいね」 「ええ……」 少女が呟くと同時に、再びぐおおおおん……と金属音が響く。 連続して、ぐおおおおおおおおん、ぐおおおおおおおおん、と、音が、音が、音が、奇怪な金属音が鳴り響く。 鳴り続ける。 「え……え? な、なに?」 「これは……」 頭が割れそうな異音に、少女は眉根を寄せ、老人は顔をしかめる。明らかに何か、異常が起きている。これまでとは違う、何かが。 二人は慌てて小屋を飛び出した。音は鳴り続いている。湖へと視線を向ける。 「ちょ、ちょっと……」 「こんなことが……」 二人の眼前には――まるで煮え立つように泡を吐き出す湖の水面があった。 ぶくぶくと、泡が水面に浮かんでは消えている。だが蒸気はない。沸騰しているわけではないのだ。ただ、水の奥底から空気が漏れ出しているかのように、泡が出続けている。それに呼応するかのように、奇妙な金属音が鳴り続けて―― 「あっ」 少女が小さく呟いた。 一際大きな泡がはじけるのと同時に、水面が大きくうねった。同時に、湖を切り裂くように『何か』が飛び出した。巨大な――恐ろしく巨大な何かが。 水底から飛び出したそれは、大量の水飛沫を噴き上げながら徐々に安定していく。津波のように押し寄せる水に対して、少女と老人はとっさに魔法で障壁を作りだし、身を護る。 水が引く。 二人の眼前にあったのは――巨大な、あまりにも巨大な、船。常識では考えられないほどのサイズの。 船体には、帆とプロペラのようにも見える部品がいくつも備わっている。長いこと水底にあったがためだろう、船体は変色し、一部腐敗しているようにも見えるが、しかしこれは―― 「――飛空艇か?」 老人が呟く。 そう、二人の目の前にあったのは、巨大な湖の水底から浮上してきた――常識では考えられないほど大きさの、超弩級の飛空艇だった。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!