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「おや、日に二回……それもこんなに続けて鳴るとは珍しいね」
「ええ……」
少女が呟くと同時に、再びぐおおおおん……と金属音が響く。
連続して、ぐおおおおおおおおん、ぐおおおおおおおおん、と、音が、音が、音が、奇怪な金属音が鳴り響く。
鳴り続ける。
「え……え? な、なに?」
「これは……」
頭が割れそうな異音に、少女は眉根を寄せ、老人は顔をしかめる。明らかに何か、異常が起きている。これまでとは違う、何かが。
二人は慌てて小屋を飛び出した。音は鳴り続いている。湖へと視線を向ける。
「ちょ、ちょっと……」
「こんなことが……」
二人の眼前には――まるで煮え立つように泡を吐き出す湖の水面があった。
ぶくぶくと、泡が水面に浮かんでは消えている。だが蒸気はない。沸騰しているわけではないのだ。ただ、水の奥底から空気が漏れ出しているかのように、泡が出続けている。それに呼応するかのように、奇妙な金属音が鳴り続けて――
「あっ」
少女が小さく呟いた。
一際大きな泡がはじけるのと同時に、水面が大きくうねった。同時に、湖を切り裂くように『何か』が飛び出した。巨大な――恐ろしく巨大な何かが。
水底から飛び出したそれは、大量の水飛沫を噴き上げながら徐々に安定していく。津波のように押し寄せる水に対して、少女と老人はとっさに魔法で障壁を作りだし、身を護る。
水が引く。
二人の眼前にあったのは――巨大な、あまりにも巨大な、船。常識では考えられないほどのサイズの。
船体には、帆とプロペラのようにも見える部品がいくつも備わっている。長いこと水底にあったがためだろう、船体は変色し、一部腐敗しているようにも見えるが、しかしこれは――
「――飛空艇か?」
老人が呟く。
そう、二人の目の前にあったのは、巨大な湖の水底から浮上してきた――常識では考えられないほど大きさの、超弩級の飛空艇だった。
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