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「本来ならば、我々エルフの手のみであの飛空艇を分析できればよかった……しかし、知っての通り我々エルフは閉じた種族です。どうしても知識の幅には限界がある」
「エルフにしては謙虚な意見だな」
「エルフも変わってきているということです。ステレオタイプのイメージだけで語るのは時代遅れかと」
エルフの言葉に、青年は鼻を鳴らす。
「それで、僕が呼ばれたと」
「別にあなたを呼んだわけではありません。人間側で、できる限り少人数で、『神々の飛空艇』と思われるものを調査できる人材を選んでもらった結果、来たのがあなただったのです――カーペンターさん」
カーペンターと呼ばれた青年は、つまらなさそうに視線を逸らした。翻って、青年……カーペンターの横で歩く少女は、目をキラキラさせながら楽しそうに笑う。
「先生は魔法考古学に関してはとても凄い方ですからね。この年齢であれだけの実績を持っているのは界隈でも歴史上先生一人って言ってもいいくらいなんですよ。その、目立つ分、何かと厭われたりもしますけれど……」
「余計なことは言わなくていい」
「いだっ!」
少女の言葉を聞いていたカーペンターは、話を止めるように彼女の頭に手刀を落とす。少女は涙目になりながら頭を抑えた。
「……そういえば聞いていませんでしたが、そちらの少女は?」
「荷物持ちだ」
「助手です!!」
カーペンターのあまりにどうでもよさそうな態度の説明に、少女は不満げな声をあげる。
「今回は先生のサポートとして一緒に調査させてもらうことになりました、私のことはナビと呼んでください!」
少女――ナビはそう言って、誇らしげに胸を張った。
「……そうですか。まあ、とにかく――」
「あ、あれ? なんか、冷淡な感じですね?」
「わたしの仕事はあなた方の案内のみなので。素性にそれほど興味はありません。とにかく、我々の森に多くの人間が大挙する、ということが避けられてよかったです」
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