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「ここに来たがっている学者連中は山ほどいたよ。そんな中で僕が選ばれたのは……どうしてだと思う?」 当てられるものならば当ててみろ、といった雰囲気で、カーペンターはエルフに問いかける。エルフは歩みを止めないまま、後ろを軽く振り向く。 「……それは、自身の有能さのひけらかし、と受け取っても?」 「いいや違う、単純なクイズだ。ただ歩いているだけじゃ暇だろ? 面白い景色があるんならともかく、鬱蒼とした木々しかないこんな道じゃな」 誇り高きエルフの森をけなすようなカーペンターの言葉に、エルフはぴくりと眉を一瞬動かしたが、特に何も言うこと無く顎に手を当てる。 「……単純に考えるなら、あなたが『神々の飛空艇』を調査するのに最も適していたから……つまり、神族に関する第一人者だったから」 「残念、外れだ。そうだな……回答権は、あと二回にしておこうか」 「では、『神々の飛空艇』ではなく、この場所……エルフの森に理由がある。あなた個人に、エルフとの何らかの繋がりがあるか、あるいはエルフと上手くやっていくための何らかの特質がある……いえ、言っていて思いましたが、そんな風には思えませんね。私個人の見方になりますが、あなたに苛立ちを覚えることはあっても、上手くやっていけるとは到底思えません」 「その通り、その答えも外れだ。僕はエルフとは何の関係もないし、別にコミュニケーション能力に関係する理由で選ばれたわけでもない。回答権は、あと一回のみだ」 「エルフと人間はともに共通言語を使用している以上、言語的な理由でもない……『神々の飛空艇』にも、『エルフ』にも理由がないのだとすれば、残るは……やはり、あなた個人の能力に理由を見い出すほかになさそうですね。つまり、純粋に、あなたが最も優秀な研究者だった」 「そう見えるのか?」 「外見で人を判断できるほど長生きはしていません」 「そうか、だったらその慧眼は今後磨いていく方がいいな。最後の答えも外れだ」 カーペンターの言葉に、エルフは小さくため息を吐く。
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