美しい人

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「もう、30年以上も昔の話しよ。 夫は、当時の大企業に勤めるエリートでね。 背が高くて、顔も良くて、悔しいけどいい男だったの。 それが、子どもを産んですぐの頃、なんとなく嫌な予感がしてね。 別に、帰りが遅くなったとかそういうわかりやすいサインなんてなかったわ。 女の感ってヤツかしら。 そしたら、1ヶ月と経たないうちに離婚しようって。 私は、19で家庭に入った世間知らずの馬鹿な女だったから、あたふたしているうちに親権まで取られちゃって。 残ったのは、きらきら輝く新婚当時の夢がいっぱい詰まったこの家だけ。
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