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初恋2
「圭吾、おはよ」
「おはよ‥‥‥貴哉」
「貴哉ぁ、ちょっとこれ教えてくれよ。今日当たりそうなの、俺」
「ん?何?あぁこれね」
自宅から離れた男子校に入ってから出来た圭吾の親友、杉本貴哉(すぎもとたかや)はクラスでも人気者だった。
優しくて背が高くて頼りがいがあって更に頭も良くて陸上部ーーー
いつの間にか圭吾は親友を超えた目で貴哉を見るようになっていた。
【決して貴哉に家の事は知られたくない】
そう思っていた。
小学校と中学校は近所の学校だったせいもあり"ヤクザの息子"という白い目で遠巻きに見られ親友どころか友達という友達も居なかった。
時には虐められたりもしたし、引きこもりにもなった。
高校に上がるのをきっかけに我儘を言って誰も自分を知らない少し離れたこの学校を志望したのだ。
そして入学式の時に見知らぬ場所に戸惑う圭吾に初めて声を掛けてくれたのがこの貴哉だった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
『君、もしかして1年?1年何組?』
『あ……えっと1年2組』
『一緒一緒。名前は?俺、杉本貴哉』
『僕は東原……。東原圭吾』
『圭吾か。圭吾、よろしくな?』
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
圭吾はそう言って笑いかけてくれた時の事をふと思い出した。
「どうした?」
ふと貴哉の顔がアップで近付いた。
「わっ…」
貴哉の髪が圭吾の髪に触れた。
「赤い顔してボーッとして。……もしかして具合でも悪いのか?」
「う……ううん、違う。大丈夫」
「そうか?ならいい」
貴哉はにっこり笑って大きな手で圭吾の髪をクシャッとした。
圭吾の胸がキュンと鳴る。
【同性を好きになるなんてきっと頭がおかしいって思われるんだろうけど……僕は貴哉がやっぱり好きだ】
「血……なのかな?」
「ん?何か言ったか?」
「ううん、何でもない」
父親の伊織も圭吾の通っていた小学校教師の桐栄と今でも深く愛し合っている。
2人は男と男。同性だ。
1度小学生の時に2人の情事の声を聞いてしまった事がある。
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『あぁっ、伊織さ……ん。だめ……激しくしな……いで』
『敏感だな……桐栄は』
『んんっ』
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あの時はただただ不潔だって思っていたけれど、今では何となく2人の気持ちが分かる気がした。
別に貴哉とどうにかなりたいわけでは無かった。ただずっと傍に居たい。
それが親友の"特権"なら今の地位のままでいい。
そう思っていた。あの日が来るまではーーー
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