フレンドリスト 「椎名 藤という男」

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どうやらアイツも敦賀の講義を受けたことがあるらしい。敦賀がメールでのレポート提出を認めないというのは、有名な話のようだ。 面倒な教授の講義は好まれないはずが謙太郎ですらこいつの講義を受けたことがあるということは、おそらく単位が簡単に取れるということなのだろう。 研究室に辿り着いて、ドアを叩く。 「はぁい」と間延びした声が聞こえて中へと踏み込むと、見た目の若い男が首を傾げていた。 「うん? どうしたのかな」 「代理でレポート提出をしにきました」 「代理? そういうの受け付けてないんだけどなあ」 困るよ、と呟かれつつ、レポートを手渡す。敦賀も面倒そうに頭を掻きながらそれを受け取って、表情が変わった。 「間宮さん? 何かあったの?」 ここでもこいつは信頼を獲得しているらしい。 「ちょっと、体調崩したらしくて」 「ええ、それは大変だ。じゃあ、今日はお休みだね。残念だけどお大事にって伝えてくれるかな」 「はい」 少し前まで渋られていたレポートは、あっけなく敦賀の手の中に収まった。 間宮朝佳は品行方正や優等生という言葉が良く馴染む。そんな人間とはあまりにもかけ離れた自分に笑えた。 つくづく、俺と朝佳は真逆の人間だ。
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