フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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「キホ」 「だから、一緒に飲みに行きませんか? ハルチさんどうせ暇ですよね?」 「お前は俺を貶すのか、誘うのか、どっちかにできねえのか」 俺の声に割って入ってくるキホは、実の所、そこまで頭が悪い女でもない。 小さく笑われて、また随分と面倒な人間に出会ってしまったものだと感じた。 「これくらい言わないと、ちゃんと食いついてくれないじゃないですかぁ」 にっこりと笑って、腕に胸元を押し付けてくる。柔らかな感触は俺の体には無いもので、確かに女なのだと実感する。ただ、それだけだった。 「悪いな。今日は予定あるわ」 「ええ、じゃあ今からカフェでも行きましょうよ」 「それもパス」 「ええー。今からどこ行くんですか?」 「服屋とスーパーとドラッグストアー」 「一緒に行きます」 来なくていい、とまでは、さすがに言えなくなった。というか、駅前方面から少し遠ざかる方向に来ていた手前、この辺に住んでいるわけでもないキホをここに放り出すわけにはいかない。 面倒だ面倒だとわかっていながら、こうして了承してしまう俺は、先日言われた通りの狡い人間なのだろうか。 あれこれと思案しつつ、目の前にドラッグストアーがあるのを見て、すぐに方向修正を加えた。 必要なものは分かっている。迷うことなく買い終えて、キホが不可思議そうな顔をしているのを無視した。
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