フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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適当に呟きながら、目の前の店に足を止めた。 洒落たショーウィンドウにディスプレイされている商品は2週間ごとに変わっているらしい。 一店員から聞いた話だから、間違いはないだろう。 秋めいたカラーのファッションを前面に押し出しているショーウインドウを見ながら、新作らしきミリタリーブルゾンに目を惹かれた。 「うわ、ハルチさんっぽい」 「はいはい」 そりゃあそうだ。俺が贔屓にしている店だ。 ぼんやりと見つめているキホの腕から離れるように先へ進むと、慌てた様にキホが追いかけてくる。 こいつはいつになったら、俺から興味を失うのだろうか。 ため息を零しながら店に足を踏み入れるとRed Hot Chili Peppersの「By The Way」が流れている。ここのオーナーが重度のレッチリファンであることは俺も知っていて、更に言うとそこも気に入っているポイントだった。 ここはいつも同じ芳香剤が馨っている。 アメリカから取り寄せた芳香剤であるそれは、明らかに日本的ではない匂いを香らせていた。 そして、その匂いを好んで店の注文と共に自分のためのものを購入する女をよく知っていた。だからここにくると、俺はいまだにその女の顔を思い出している。 「あれ……、いらっしゃい」
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