フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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横から声がかかって、振り向いた。その先に、俺が思い浮かべていたのとは少し違う女がいた。 俺の知ったボブヘアーは肩にかかっており、少し伸びている。常にきれいにカラーリングされていた髪色は、俺の知る色ではなくなっていた。 その変化に、僅かな時間の経過を感じる。 「ああ」 小さく呼応すると、その女は笑った。その笑顔だけが、俺の良く知ったものと変わらずに存在していた。 「久しぶり、買いに来てくれたの?」 ゆっくりと近づいてきた女に気を取られていると、腕に引力がかかる。何かと思って振り返ったら、真顔のキホがいた。 なぜそんな顔をする、と言いたいが、目の前から良く知った女が歩いてきているのをもう一度確認して、その女——カンナに目を向けた。 「ああ、少し選んでもらいたいものがあって」 「え? 私に?」 「忙しいか?」 控えめに尋ねると、全然、と返される。それに笑って口を開こうとすると、もう一度キホに袖を引かれた。 「どうした?」 尋ねても返答はない。 ただむっと眉を寄せたキホが俺の瞳を見つめていた。お前は俺の彼女か、と呆れていると、目の前から同じ問いかけを受ける。 「うん? 新しい彼女?」
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