フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

6/18
前へ
/400ページ
次へ
「新しい彼女?」という問いに思わず苦笑しかけて噛み潰した。まるで、俺に何人も替えがいるような言い方だ。 カンナから見た俺の印象はその程度なのかもしれないが、そこまで節操のない男である自覚はなかった。 「違うから。こいつは後輩」 「あ、そうなんだ。こんにちは。ハル、黒木くんの、うーん、なんだろう?」 「元カノ」 「え、それ言っちゃうんだ」 どうでも良いところで言いよどむカンナにため息を吐くと、小さく笑われる。そんなことより、久しぶりに自分の苗字を呼ばれて、たまらず口を挟んでいた。 悠長に話している時間はないから、欲しいものを告げようとして、今度はキホが口を開いた。 女はどうしてこうもコミュニケーションに長けているのだろう。朝佳を除いて。 「ああ、半年前に別れたって人ですか」 小さく、それも鋭利そうな声で呟かれた言葉にうんざりした。 だったら何だ。 両者がにこにこと笑い合っている中、こいつらが顔を合せても問題ないだろうと踏んでいた自分を呪いたくなった。 面倒だ。頗る面倒だ。今すぐ用事を終わらせたい。 店内にはニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」が流れていた。言うまでもない名曲に合わせて目の前では女が二人、顔を突き合わせている。
/400ページ

最初のコメントを投稿しよう!

794人が本棚に入れています
本棚に追加