フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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どうでも良すぎて頭を抱えたくなったが、そういうわけにもいかずに口を開く。 「俺がフラれた」 小さく吐いて、二人の顔がこちらを向くのを感じた。何も間違ったことは言っていない。事実を吐いたのに、どうしてこんな目で見られているのだろうか。 「何、可哀想すぎて同情してんの?」 「え、いや……、そうじゃないですけど……」 口ごもるキホが俯いた。その仕草に思わず右手が出た。 ああ、と思い出した時にはキホの髪を撫でている。またやってしまったと思っては、すぐに手を離した。 手を離して、カンナが俺の動作を凝視しているのを知った。それに「何だ」と問いかけると、「何でもない」と返される。 俺の周りには、何でもないわけがないくせに、すぐに何でもないを言うやつばかりが揃っているかもしれない。 面倒だが、それを問い詰めるのは更に面倒だ。俺がそこまでやりたい女は、一人しかいない。思い直して、霞み始めていたここに来た理由を何とか口に出す。 「カンナ」 「うん?」 「部屋着っぽいやつ、適当に見繕ってくれねえ?」 「部屋着?」 「ああ」 カンナは不可思議そうな顔をしていた。当然だろう。俺はいつでも適当に選んで、適当に買っていく。そこにカンナの意見はない。 ただ、こればかりは俺の一任では決められない。
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