フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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「良いけど……」 「頼む」 呟いて、任務を遂行した俺は、メンズコーナーに足を踏み入れた。キホはワンテンポ遅れて後ろについてくる。 わざわざ後ろをついてくる律儀なやつだと思ったが、それ以前にこのセレクトショップの系統自体がキホには合っていなかった。 少し前に見たブルゾンが目の前に飛んでくる。それを見ながら、もう一度袖を引かれて、振り返ると想像通りにキホがいた。 どうしたと聞こうとして、視界の端にチラついた女に言葉を切った。 「カンナ」 キホの方に体を向けながら、自分の決定的なミスを思い返した。カンナは俺の声に首を傾げながら、メンズもののティシャツに触れていた手を止めた。 「悪い、言い忘れた。選んでほしいやつ、女物の部屋着」 俺の言葉に、誰も言葉を発さなくなった。 可笑しなことを言ったつもりはないが、じっと見つめていると、カンナが自嘲するように笑った。 「それ、その子に選んでもらわなくていいの?」 「あ?」 そういえばキホがいたかと思った。カンナとは違い、いつもスカートを履いているこの女の方が、朝佳のスタイルには近いのかもしれない。 ちらりと見つめると「絶対嫌です」と言われた。そんな気がした。 ため息を吐きつつカンナに顔を戻すと、呆れたような顔で「わかった」と言われる。とりあえず了承されたらしい。
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