フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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今度こそ任務を遂行した気になってブルゾンに手をかける。そこにもう一度袖を引かれて、今度こそキホに問いかけた。 「どうした」 「ハルチさん、私が思ってた以上に残酷でびっくりしてるんですけど。わかっててやってるんですか」 「何が」 「元カノの前に女の子と現れて、更に別の女の子へのプレゼントを買ってるって、正気じゃないと思いますよ」 キホのグロスに塗れた唇が動く。その声が暗に俺を批判していた。 キホはカンナの立場でものを言っているが、実際には自分が感じたことを言っているのだろう。そんな気がした。 確かに正気じゃない。 俺がもし、朝佳にこれをやられたら、あんなふうにへらへら笑っていられないだろう。その辺のところは、女は良くできていると思う。 俺には不可能だ。 敦賀の余裕たっぷりの顔を見ることすら放棄した。割と堪え性のない人間だったらしい。 自分がされて嫌なことをしてはいけませんと習ったくせに、俺が今日仕出かしたことは、おそらく最低を極めていた。それでいい。狡い男らしく、最低なやり方で、キホの指先を離そうとしている。 「正気じゃねえから諦める?」 「俄然やる気出ました」
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