フレンドリスト 「椎名 藤という男」

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どこへ出向いて金を払うときも、全て金が俺のものではない。奢ったことに対する礼を言われると、俺はつねに笑い出したくなった。 厚意でも何でもない。 ただ、俺のクソみたいな足掻きに付き合わせているだけだ。良心などない。 無駄に高い部屋に住んでいることも、意味もなく毎日ハウスキーパーに部屋を掃除させていることも、わざわざ国内で一番学費の高い大学に通っていることも、その勉強を蔑ろにしていることも、全て、無駄な意味を持っていた。 全くもって無駄な。 ほとんどの人生において、最も高額な投資は教育らしい。 おそらく、俺の家庭には適応されないのだろうが。 ため息のように吐いて、ソファに座り直す。 少し前に妙な着信があったスマホが、誰かからの連絡を通知して一定間隔で光る。手に取って画面を見やれば、メッセージは藤から来ているようだった。 この時間に連絡を取ってくるとしたらこいつ以外に考えられないのだが、さっきの妙な男ではないことに力が抜ける。 “今日は来ないの? 間宮さん、多分4限とってるよ” おそらく、したり顔で笑っているだろう藤に無意識に笑いながら、得られた情報に感謝する。 4限があるなら、こいつは無理にでも大学へ行こうとするだろう。朝佳の動きを止めるためにできることは、一つくらいしか浮かばなかった。 “パス。藤は4限出んの?” 打ち込むと、すぐに戻ってきた返信に、藤もリアルタイムでメッセージを見ていることを知った。 “出るよ”
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