フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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いつでも愛想笑いの絶えないこいつが、どれだけこの仕事を愛しているか知っている。だから、何か衣料を買うとしたら、ここにすると決めていた。 それくらいでしか、俺はこいつに返してやれない。 俺のカードに触れた指先が、乳白色に色づいていた。そんなところにも変化を感じる。 俺が知るこいつは、いつも桜色の爪を維持していた。 「これを送るのが、新しい彼女?」 小さく発せられた言葉に思わず笑った。こいつはどうも、俺に新しい彼女がいてほしいらしい。 「ちげえよ。カンナにフラれてから、いまだに寂しくフリーだっつうの」 「うそ」 「お前、どんだけ俺が節操なしだと思ってんの?」 返ってきたカードを受け取りながら、さりげなく触れそうになった手を遠ざけた。特に意味はない。 「そうじゃないけど……」 カウンターの前から紙袋を渡される。それが俺の想像以上に大きい事に面を食らった。 こんなに大きな袋に入れるほどアイテムを買った記憶がない。不可思議に思っていると、言葉尻を濁していたカンナがもう一度薄く唇を開いたのが見えた。 「その色、私なら絶対選ばないし、私の知ってるハルチも選ばないと思うから。絶対本命だと思った。それに私に頼むくらいだから、相当失敗したくないんだと思って」
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