フレンドリスト 「キホとカンナと本命」

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適当にはぐらかすと、カンナが言葉を失っていた。瞬時に発言すべきでなかったことを知ったが、出てきた言葉は戻せない。 店内にはビートルズが流れていた。「HELP!」の冒頭に自分を重ねて嘲笑しつつ、「じゃあ行くわ」と声に出してつま先を出口に向けた。 カンナは、いつもドアまで送り出しに来るくせに、今日初めて、その場に放心したように立ち尽くしていた。 店を出て、最後にスーパーへ向かおうとしていると、キホがまた俺の腕を引いた。 こいつはよくもまあ俺にフリーコインで触れてくる。 金を取ったらどれくらいになるのだろうか。 俺が朝佳に触れることをこんなに制限している一方で、自分が簡単に触れられている事実に違和感を覚える。覚えたところで、キホの行動をコントロールすることはできないだろうが。 「良かったんですか」 「あ?」 「あの人、まだハルチさんの事めちゃくちゃ好きですよ」 冷静そうな口調に、足が止まりそうになった。 目の前には24時間営業のスーパーがある。 そこまでこいつは、ついて来るつもりなのだろうか。 げんなりしているところに突き刺さった言葉は、しっかりと俺の脳髄に反響した。
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